【読書感想文の本 学年別 司書のイチオシ】ネタ切れで困っている学校司書さん必見!
夏休み前の特別貸し出し期間(通常より貸出期間が長く、借りられる冊数も多い)には、学級単位で図書館に来て、夏休みのための本を借りてもらうよう,、先生方に声をかけましょう。
学校図書館に来たら、自由研究に役立つ本や読書感想文のために読む本を紹介します。読書感想文の本は課題図書だけではありません。
みなさんも、「イチオシ!」の本をたくさん持っていると思います。今回は、私の学年別「司書のイチオシ」を紹介します!
どんどん借りられて「ネタ」が手薄になってきたら参考にしてみてください。皆さんの「イチオシ」と被っている作品も多いと思いますが。
過去の課題図書も含みます。
そして何より、どこの学校図書館でもたいてい蔵書としてある本、それから学習とリンクしている本から選んでいます。
小学1年生
○にじいろのさかな (著・文/マーカス・フィスター 翻訳/谷川俊太郎 出版/講談社 1995年10月)
人気の、装丁が美しい絵本です。シリーズがたくさん出ています。1年生にもちょうど、自分と照らし合わせることができるくらいの内容です。司書が読み聞かせをして、「シリーズがたくさんあります」と紹介すると、「売り切れ」てしまいます。長さも夏休みにじっくり読めるくらいで、字を習いたての子どもにはちょうどよいボリュームのある本です。
○たまごにいちゃん (著・文・イラスト/ あきやまただし 出版/鈴木出版 2001年)
「へんしんシリーズ」「はなかっぱ」など、1年生にはおなじみの あきやまただしさんの作品です。たまごからなかなか出ることができないおにいちゃんは、成長していく弟を見ても、「たまごの中にいる方いい」点を捨てることができません。この前まで幼稚園児・保育園児から1年生になって大きく環境が変わった子どもたちは、成長していく自分と未来をどう見ているのでしょうか。「赤ちゃんのままのほうがよかった」と「たまごにいちゃん」の気持ちが分かる子がいるかもしれません。
小学2年生
○魔女ののろいアメ (作/草野あきこ 絵/ひがしちから 出版/PHP研究所 2018年10月)
頑張れば1年生から読めます。アニメでも人気の、廣嶋玲子さんの「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」(出版/偕成社 2013年5月)を借りたがる2年生には、まずこの本を手渡します。「銭天堂」は2年生には内容が少し高度だからです。姉妹のささいなケンカで、妹が怒って、魔女の「のろいアメ」で姉を困らせようとするお話です。2年生では同じく姉妹の物語「わたしはおねえさん」を掲載する教科書があり、「すみれちゃん」(作/石井睦美 絵/黒井健 出版/偕成社 2005年12月)シリーズを読みます。「わたしはおねえさん」は教科書の下に掲載されているので、夏休み以後の単元になりますが、この「魔女ののろいアメ」もちょうど共感できる学齢です。
○幼年版・ファーブルこんちゅう記 (作/小林清之助 絵/たかはしきよし 出版/あすなろ書房 1993年1月)
知識の本が読み物になっていて、進んで読書をするタイプでない子どもでも、特に虫が好きな子どもは楽しんで読める、言わずと知れた名作です。1巻の「ふんころがし」は、読み聞かせをしてもよいでしょう。「ふん」という子どもが好きなフレーズに笑顔で物語に入っていき、虫の知恵と頑張りと生命の不思議に目を見張ります。たんぽぽやふきのとうの知恵を教科書で学び、「知識のお話っておもしろい」とちょうど動植物に興味が強くなっている時です。「刺さる子」がいます。
小学3年生
○あらしのよるに (作/きむらゆういち 絵/あべ弘士 出版/講談社 1994年)
ある嵐の夜に、洞窟に逃げ込んだヒツジが、後から入ってきた動物がオオカミではなくヒツジだと思い込み、またオオカミも先客がヒツジではなく同じオオカミだと思い込んで友だちになるお話。そして翌日一緒にご飯を食べる約束をします。読み聞かせをすると、ハラハラドキドキする場面がたくさんあるので、子どもたちの思わずもれてしまう声や反応で、読み手も楽しめます。最後には「ここで終わるのか~」と身もだえする姿が見られます。「先を想像する力」「気持ちを推し量る力」が発達する小学3年生から、ようやく「この本の楽しみ方」ができる本です。2作目も読み聞かせをして、皆と共有するとよいでしょう。全7巻、止まらなくなります。「家族と一緒に読んでいる」という声も聞かれます。どの巻を読んでも、読書感想文を書くことができると思いますが、1・2巻を読んでおくことをおすすめします。
○しっぱいにかんぱい (作/宮川ひろ 絵/小泉るみ子 出版/童心社 2008年9月)
運動会の花形種目のリレーで失敗してしまった6年生の加奈ちゃんのお話です。春に運動会が行われる学校もあり、身近な題材です。自分のやってしまったことで落ち込むことは大人でもありますが、子どもにとっての失敗の経験は「人生の大事件」くらい大きなものでしょう。まだ、加奈ちゃんほどの失敗を経験したことのない子でも、想像するだけで同情や共感の気持ちで胸がキュンとしたり、周りの人たちの優しさに心が温かくなったり、勇気が出たり。加奈ちゃんと一緒に成長できる一冊です。「かんぱいシリーズ」は複数出ています。3年生は「シリーズを読む」単元があります。「もっと読みたい」と思えるシリーズです。
小学4年生
○かあちゃん取扱説明書 (作/いとうみく 絵/佐藤真紀子 出版/童心社 2013年5月)
「あー、そうそう」と共感の声が聞こえてきそうな、日頃、子どもがお母さんについて思っているようなことのお話です。お友だちのお母さんのことを「優しくて、うらやましい」と思ったこともあるでしょう。そして胸がジーンと温かくなる、クスリと笑える結末が待っています。大人も子どもも楽しめる本なので、家庭で本について会話をしながら、共感した場面や、自分や自分の親との対比をまとめていくと、素敵な読書感想文ができあがるのではないでしょうか。
○ルドルフとイッパイアッテナ (作/斉藤洋 絵/杉浦茂範 出版/講談社 1987年5月)
映画にもなったので、知っている子どももいるかもしれません。飼い猫だったルドルフが、ひょんなことで野良猫のイッパイアッテナと生活するようになります。本の紹介で「イッパイアッテナ」の名前の由来を子どもに話すと笑いが起きます。まさしく「笑いあり涙あり」の勇気と友情のお話で、4年生にも熱く語りかけてくれます。4年生は「シリーズを読む」の読書単元があるので、この「ルドルフのシリーズ」もおすすめです。
小学5年生
○獣の奏者 (作/上橋菜穂子 出版/講談社 2006年11月)
国際アンデルセン賞を受賞した上橋菜穂子さんの、エリンという少女が主人公の壮大なファンタジーです。獣の医術士の母は、エリンが幼い頃に亡くなります。その後、エリンは宿命と希望、王国の運命とが交錯する長いの物語が始まります。「魔女の宅急便」(作/角野栄子 出版/福音館書店 1985年1月)のキキのように、少女が成長し大人になります。是非、全巻読破を子どもにはオススメしたいシリーズです。5年生は「作者を意識した読書」を学習するので、合わせて上橋菜穂子さんの「精霊の守り人」シリーズも紹介します。
○二分間の冒険 (作/岡田淳 絵/太田大八 出版/偕成社 1985年4月)
男の子が校庭でみんなと作業をしているところへ、通りかかった黒猫について行くと「子どもだけが住む世界」に着き、支配している竜と「なぞなぞ対決」をすることになります。「一番確かなもの」を探していく冒険の物語です。
小学校の教師をしていたという岡田淳さんの作品は、ファンタジーですが、身近な小学校が舞台の作品が多く、読者も物語の中に簡単に入り込めてしまうでしょう。文字で読んでいても、映像が頭に浮かんでくるような、不思議な感覚も体験できます。「岡田淳さんという作者の本を選べば、間違いない」ということを子どもたちに知ってほしいです。
小学6年生
○君たちはどう生きるか (作/吉野源三郎 初版発行/新潮社 1935年)
コペル君と呼ばれる少年が主人公で、自分の「学生生活」に、人として真摯に向き合い、大切に人生を送る中での、叔父さんからのメッセージが読者にも響きます。読み終わると、自分が別人になったかと思うほど、体の中に染みわたっている感覚をおぼえます。本の紹介の時には「是非、自分をバージョンアップしたい人に貸します」と加えます。2017年8月にマンガが出て話題になりました。叔父さんのメッセージの場面は、人物のイラストがしゃべる「会話調」ではなく、ノートを開いたイラストの中に縦書きに丁寧に記されているのが印象的です。「子ども」のうちに読んでおきたい本です。
○糸子の体重計 (作/いとうみく 絵/佐藤真紀子 出版/童心社 2012年4月)
糸子は食べることが大好きなので、給食のおかわりを率先してするので、体形のことでからかわれることがあります。中でも、痩身できれいな町田良子が冷たい視線を送ります。実は、町田良子が敵意を示すには、彼女なりの事情があります。6年生の単元で「視点のちがいに着目して読む」単元があります。ひとつの教室にいる子どもたちも、実はそれぞれ違う環境で育ち、考えているので、意見や物の見方や考え方が違っていて当たり前、ということを改めて感じさせてくれる本です。6年生と同世代の子どもが登場し、それぞれの立場・視点から物語が進みます。共感と対比と違和感など、読書感想文には書ききれないほど、「読み応え」のある1冊です。
「視点のちがい」の本といえば、
- 「ワンダー」 作/R・J・パラシオ 訳/中井はるの 出版/ぽるぷ社 2015年7月
- 「流れ星キャンプ」 作/嘉成晴香 絵/宮尾和孝 出版/あかね書房 2016年10月
が記憶に新しいかもしれませんね。
○ガラスのうさぎ (作/高木敏子 画/武部本一郎 出版/金の星社 1977年12月)
詳しくは、ブログ「読書感想文に向いている本って」▶ で。
書ききれないほど、まだまだあります!
読書感想文にお勧めの本のネタが切れたら・・・参考になるサイト
絵本ナビHPで秋山朋恵さん(「つぎ、なにをよむ?」シリーズの編者)がおすすめの本を紹介してくれています。
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