整列して教室を移動することも慣れていない1年生が、一生懸命、前の人に続いて、階段を上ってあるいは下りて、はるばるやってきます。

実は、先生方にも子どもにとってこれは大変なことです💦

図書館内や入口は、1年生歓迎の飾りをして、春らしく明るい装飾をしています。

1回目から4回目まで順を追って、初めての図書の時間の流れを説明しています。

1度に色々言って混乱させてしまうより、1つ1つ着実に進めていきます。

図書の時間の過ごし方が定着してきたら、本の貸し借りを行う練習をします。

本はまだ家には持ち帰らず、教室のロッカーにしまって、次回の図書の時間に持っていく練習を重ねます。

丁寧に行うことにより、図書館への期待感が増していきます。

休み時間など、学級担任がいない時でも、図書館で正しい行動ができるようになります。

1年生図書の時間のメニュー

1回目から4回目まで順を追って、初めての図書の時間の流れを説明しています。

【1回目】  

①整列をしたまま、静かに入室する>     

入口では「おはようございます」と一人一人にあいさつを声かけをし、子どももあいさつを返します。

今後、休み時間に図書館に入る時にもあいさつをして入室する習慣がつきます。

<②絵本の読み聞かせができるスペースに座る>     

席やスペースに「はい、座って」と言っても、どこに座っていいのか分からず戸惑います。

事前に担任の先生と、出席番号順なのか整列してきたまま座るのか相談しておきます。

「はい、出席番号順に座ります」と言っても戸惑うので、初めは一人一人名前を呼んで席を示してあげます。

席ではなくスペースの場合は「この辺りが1番前で、5人ずつ並んで座る」と言っても「この辺り」という曖昧な言葉では分かりにくいです。

「この線」とはっきり分かるように棒やすずらんテープなどで線を作っておきます。

「5人」と言っても5人くっついて座ることもあるので、一人一人名前を呼んで座る位置を示してあげます。だんだん慣れくると、声を掛け合う姿が見られます。

そして、手前半分より奥の半分の方が絵本の絵が見えにくいので、毎回、半分を交互にしてます。

例えば、「出席番号1~15までは今回は前の方に座る」と、そして次の図書の時間には「出席番号16~30が前の方に座る」と指示してあげます。

<③授業のはじまりのあいさつ>     

日直に合わせて図書の時間のあいさつを全員でします。もしまだ日直の制度が定まっていなかったら、担任の先生に合わせてあいさつをします。

<④絵本の読み聞かせ>     

知っている子、好きな子が多いと思われる「ぐりとぐら」(作/中川李枝子・絵/山脇百合子 福音館書店)を読んでいます。

安心感を与えることができると思います。

<⑤司書の自己紹介>     

パネルに名前を書いて出します。

「図書館の先生の○○○○○○です。いつも図書館にいます。図書館のこと、本のこと、なんでも聞いてください。」

(フルネームで言います。幼稚園の先生は苗字でなく、名前で○○子先生と呼んでいたと思うので、名前まで紹介するとよいと思います。)

<⑥図書館ってどんなところかを話す>     

「休み時間に自由に来てよい」

「図書館の本をどれでも読むことができる」

「知りたいことを調べることができる」

「本を借りることができる」

未来の展望を話すと子どもたちの目が輝いてきます。

公共図書館で本を借りたことがない子どもは、レンタルCDやレンタルDVDのイメージでお金がかかると思っている子どももいると聞いたことがあります。そのあたりも何気なく付け加えています。

<⑦図書館での過ごし方のおやくそくを話す>     

「本はみんなの宝物。大切にします。」と本の取り扱い方について話しています。

「静かに本を読んでいる人がいるので、静かにします。」

「広いので、遠くのお友だちに話す時には、近くに行って話します。(わざと大きな声で)『そろそろ外に遊びに行こうよ』と大きな声を出すと、驚いてしまうでしょ?お友達の隣まで行って、声は1の声で話しかけてください。」

「『昨日さ、ゲームでさ』とおしゃべりはしません。おしゃべりをしたくなったら図書館から出ましょう。」

「みなさんの教室より広いので、特に雨の日に元気が余ってしまっていても、走らない、踊らない。(ちょっと踊るポーズをすると場の雰囲気が柔らかくなります)」

「走らないといっても、かくれんぼもしません。」

「遊ぶこともできます。(「ミッケ」のような)探す本や楽しい本を読むこともできるし、折り紙やなぞなぞやあやとりの本もあるので遊べます。折り紙も図書館に置いてあるので、欲しい人は声をかけてください。」

パネルにポイントを書いて出しながら話すと分かりやすいです。

パペットを使って説明すると、楽しく安心した気持ちで話を聞くことができます。

禁止用語ばかり並べてしまうと窮屈な印象を与えてしまうので、ルールを守って楽しく色々なことができることをアピールしています。

<⑧本の紹介>    

 ⑥で「知りたいことを調べる」と言ったので、例えば「かぶとむしの飼い方」「草花の育て方」「お料理の本」「恐竜の名前」など、1年生が興味がありそうなテーマの本をいくつか準備して紹介します。読み聞かせをした本に関連した又はシリーズの本も「みんなの好きな絵本もたくさんある」と言い、いくつか紹介します。

<⑨自由読書の時間>     

図書館を実際に見て回り、どんな本があるのか見て、本を選んで座って読んでもいいと声を掛けています。

取り出した本は、元のあった場所にしまうことを言います。

<⑩本を片付ける>     

席を立った時には、椅子をしまうことを先に言います。「元のあった場所が分からなくなってしまった場合には、学校司書に聞きましょう。」ち声をかけます。

<⑪教室に戻るため整列する>     

<⑫日直(担任の先生)に合わせて、授業の終わりのあいさつをして、静かに退出する>     

このタイミングであいさつをすると、列と姿勢を正し、落ち着いた状態になるので、そのまま静かに退出することができます。退出時に一人一人に「さようなら」と声をかけます。

このくらいで45分です。

【2回目】

「図書の時間」は1週間に1度だと、1回目の図書の時間から1週間経っています。1回目の図書館のルール、マナーをおさらいいながら、新しいことを話しています。

<①整列したまま、静かに入室する> 

<②絵本の読み聞かせができるスペースに座る>     

前回、後方に座った子どもは前方に、前方に座った子どもは後方に座らせます。一人一人声をかけて席や位置を示してあげます。

慣れるまでは、毎回と同じでもいいです。

<③授業の始まりのあいさつ>

<④絵本の読み聞かせ>    

 「ふしぎなキャンディやさん」(作・絵 みやにしたつや 金の星社)など笑える本を選んでいます。

シリーズや続きがある本を選ぶと、子どもの「続きが読みたい」という読書意欲につながります。

<⑤自己紹介をもう1度>     

「覚えていてくれてるかな?」と自分に名前のパネルを出し、自己紹介をします。

<⑥図書館の過ごし方のおさらい>     

1回目のパネルを使って、クイズ形式にすると楽しくて分かりやすいです。

「お友だちと同じ本を同時に取った場合」を担任の先生と劇で教えています。譲り合いや順番など、学級の発達に合わせて、担任の先生と相談しておきます。

<⑦本の紹介>    

前回紹介した本も一緒に並べてあげると、前回他の子どもに先に取られてしまって読めなかった子どもの読みたかったという欲求に答えてあげられます。

<⑧図書館の自分の席を教える>     

自分の席を教えます。

席に数字のカードを置いておき、一人一人名前と番号を言って席に案内します。

担任の先生と共にするとスムーズです。

特別支援学級にも在籍している子どもを含んだ名簿を使用します。(当然ですが)

その時に、特別支援学級の子どもがいない時間は、その子どもの席は空席にしています。

子どもたちも「今はいないけど同じクラスの子」という意識があります。

他教科で図書館を使った場合で特別支援学級の子どもも一緒に学習する時や後日図書の時間に一緒に来た時に、その子に席を案内することができます。

<⑨自由読書>     

本を選んで、自分の席に座って読むことを指導します。

<⑩本を片付ける>     

イスは、立った時にしまうことを先に言ってから、本の片付けの声をかけています。

<⑪教室に戻るよう整列>

<⑫授業の終わりのあいさつをして、静かに退出>

【3回目】

3回目はGWの前後になると思います。もしGWの後の場合は、また図書館のルール・マナーを忘れてしまっていることもあるので、おさらいをしながら始めます。

<①整列したまま入室>     

静かに入室しながら、一人一人あいさつします。

<②読み聞かせの体制にする>     

<③授業のはじまりのあいさつ>

<④読み聞かせ>     

「はなさかじいさん」など春らしい紙芝居を読みます。紙芝居の舞台(紙芝居を入れる装置のこと)は子どもに見えるよう、机や箱を重ねて、危なくないよう支えます。

読み聞かせの後は必ず関連する本を最低4冊は用意して紹介しています。今回は昔話を紹介します。

<⑤自己紹介と図書館の使い方をおさらい>     

読み聞かせの体制から移動する前には、「一度ぴっとしましょう」と声をかけて「ありがとうございました」とこちらから言うと、子どもたちも声を合わせて「ありがとうございました」と言います。

読み聞かせで姿勢が崩れた子も一度姿勢を正すと、自然に静かに次の行動に移すことができます。

このタイミングで担任の先生から子どもたちに、今日の図書館のめあてなど話ができます。

<⑥自分の席を確認して座る>     

忘れてしまった子にももう1度教えます。前後のお友だちを覚えておくよう教えます。

<⑦自由読書と図書館探検>     

1グループ10人くらいずつ集めて、図書館の探検をします。

0類から順に巡り、普段目が届かない上の方の本や、絵本コーナーや物語ではなく、一見難しそうに見える棚にも1年生が楽しめる本があることを紹介します。

終わったら次のグループと探検をします。

<⑧本を片付ける>

<⑨教室へ戻るため整列>     

本と椅子がちゃんとしまわれているか確認して、出ている場合は、その席の子どもにしまうよう指示をします。

<⑩授業の終わりのあいさつをして静かに退室>     

終わりの挨拶は、着席している時にしてもいいですが、立ち上がり、整列するときに「隣がいない」とか「もっとつめて」と再びガヤガヤします。

そのまま退室するとガヤガヤのまま歩き出します。

整列しガヤガヤを落ち着かせてから、あいさつをすると、担任の先生からこの後の支持などの話もよく通ります。退室時にはひとりひとり「さようなら」とあいさつをします。

【4回目】

読み聞かせの後、絵本の並び方の話をします。絵本のしまう場所が分からなくなってしまった時には、背ラベルを見て、書いてあるひらがなの所に返すように言います。まだひらがなを全部学習しているわけではないですが、話しておきます。

順を追って教えていくと、とてもスムーズです。

回を重ねることで、たったの4回でも子どもの成長が感じられて、先生も子どもも充足感があります。

先生方にも、このメニューでよいかを事前に相談し、先生と協働することが理想ですが、初めて1年生を持たれる先生は「お任せします」と言われるかもしれないので、メニューをプリントして、お渡ししておくと確認が確実になります。

5回目以降

貸出ができそうになったら、読み聞かせの後に、貸出のルールをお話します。

時間通りに終われるように、十分時間を取って、貸出を行います。

最初は、他学年より2倍くらい時間を取ります。

貸出について

図書館のおやくそくを守れるようになったら、本の貸出を行います。学年で合わせる方が不公平なく進めることができます。

必ず、全員借ります。

本を選ぶこともお勉強です。決められない子には、助言をしたり、一緒に探してあげたりします。

レクチャーします

○借りる手続き ○持ち歩き方 ○返し方 をレクチャーします。

借り方

貸出個人カードの保管の仕方など、貸出の仕方は学校により違いがありますが、子どもがカウンターの前に並び、順に貸出手続きをすることは同じだと思います。

最初は混乱を避けるため、「出席番号10番まで」など人数を区切って並ばせます。毎回出席番号1番からではなく、次は10番から、と待つ時間が平均になるよう工夫しています。「本はみんなの宝もの」なので、ひと手間ですが、両手で受け渡すようにしています。

まだ家には持って帰らない

貸出はしますが、家にはまだ持ち帰りません。教室で読めるよう、各自ロッカーにしまい、次回の図書の時間までたっぷり読みます。

教室での注意点

教室で、自分が借りた本をお友だちに「はいどうぞ」と貸しません。

借りた人が返すので、「○○ちゃんがなくした」とか「○○ちゃんの次に△△くんに貸して・・・」となっても、借りた人が返すことがルールです。もし「面白そう。読みたい。」と言われたら一緒に読むか、「次に借りたら。」と書名を教えてあげるようにします。

翌週は返却の練習

翌週は返却の練習をします。読み聞かせをした後、また混乱を避けるため、人数を区切ってカウンター前に並ぶよう指示をします。返却作業が終わったら、本を元の場所に戻しますが、1週間経っているため、場所が分からない子どもがいた場合は、全員の返却が終わるまで待ってもらい、司書が一緒に元の場所に戻します。

慣れたら、返すタイミングは、入室した時か読み聞かせの後か、子どもの動線を考えて決めましょう。

繰り返し練習

①借りる本を選ぶ

②カウンターで本を借りる手続きをする

③教室に持って行く

④ロッカーにしまう

⑤1週間、保管する

⑥次の図書の時間に本を図書館に持って行く

⑦カウンターで返却の手続きをする

⑧本を元の場所に戻す

を繰り返し練習します。

「返す」と「戻す」の違い

カウンターで返却手続きをせずに本棚にしまい「返した」という子どもがいます。「返す」というのは「カウンターで司書にパソコンでピッとしてもらうこと」であり、本棚にしまうことは「戻す」ということで、「返す」と「戻す」の違いを説明します。返さずに戻すとパソコンの機械の中ではまだ借りていることになっているので、次に本を借りることができません。

家に持って帰る時の注意点

いよいよ、本を家に持って帰ります。

家に持って帰るまでの注意、家での本の取り扱いについてお話をします。

○学校から家へ、家から学校へ本を持ち運ぶ時は、必ずランドセルか手提げ袋に入れます。

★ランドセルのふたにはさんだり、手で持ったりして、帰りません。

○家でおかしを食べたり、ジュースを飲んだりしながら、本を読みません。

○兄弟姉妹に「はい、どうぞ」と貸しません。失くしたり、破損したりした場合、借りた人が、借りた状態で返すことがルールです。

○破けていたり、ページが外れたりしていても、家のセロハンテープでは直しません。

ページが落ちないように注意して持ってきて、学校司書に教えてください。本の修理用の特別なテープで直します。

保護者に「本を持ち帰る」旨のお便りを発行して、ご協力をお願いします。